【Black Lives Matter】アメリカの黒人差別|2020年現在のアメリカで起こっていること

アメリカ生活 | Life in America

こんにちは。エリです!

現在アメリカでは、黒人差別に対する運動が大きな社会現象となっています。

単一文化民族である日本人の私たちが、アメリカの黒人差別問題を根本から理解するのはとても難しいです。

日本で生まれ育った私は、恥ずかしいことに、アメリカの黒人差別は歴史上の出来事で、繰り返してはいけない過去の話と思っていました。

しかし、アメリカの黒人差別は、2020年の現在も根強く残っているのをアメリカに住んでみて初めて気づかされました。

遠く離れた日本にいる皆さんのために、アメリカで現在もリアルに起こっている黒人に対する差別、Black Lives Matter(黒人の命は大切)運動、そして最後に、私たちに今できることについて記事を書きました。

長い記事となってしまいましたが、ぜひ読んでいただきたいです。

 

引き金となったGeorge Floydさんの圧迫死事件

2020年5月25日、アメリカのミネソタ州で、黒人男性のGeorge Floydさんが白人警察官に膝で首を押さえ付けられ死亡する事件が起こりました。

偽の紙幣を使った疑いで拘束されたGeorgeさんは、手錠をすでにかけられている状態であるのにも関わらず、地面に押し倒された後に白人警察官によって膝で頸部を圧迫され、その後死亡しました。

Georgeさんは拘束時、武器は何一つ持っていませんでした。

日中に起こったこの事件は、周囲にいた一般人により撮影され、その動画がインターネット上で拡散されました。

映像にはなんと8分以上にわたって白人警察官の全体重を首にかけられ、

「Please, Help me(お願いだ、助けてくれ)」

I can’t breathe(息が出来ない)

と何度も弱々しく懇願するGeorgeさんが映っています。

周囲にいる一般の人たちは揃って、「彼はもう抵抗していない!」「彼を殺す気か!」「もう彼は動いてないぞ」と警察官に向かって呼び掛けますが、その場にいた3人の警察官は白人警察官を止めようとはしませんでした。

この事件を受け、アメリカでは抗議運動が加速。

George Floydさんの最後に発した言葉「I can’t breathe(息が出来ない)」をスローガンとし、現在アメリカの各地でデモや暴動が起きています。

 

2020年に立て続けに起きた黒人銃殺事件

George Floydさんの事件は、単なる氷山の一角でしかありません。

アメリカでは、黒人が肌の色を理由に命を落とす事件が2020年だけでもこんなに起きています。

 

ジョギング中の黒人青年が白人親子に銃殺された事件

2020年2月23日、ジョージア州に住む黒人男性のAhmaud Aubreyさんが近所でジョギングをしていたところ、その地域に住む白人父子(父親は元警察官)に追いかけられ、射殺されました。

犯人の親子は、当時この地域では強盗が発生していて、Ahmaudさんがその犯人に似ていたため、自分たちで身柄を拘束しようとしたと供述しています。

ただジョギングしていただけの青年が理由もなく射殺されてしまったことだけでなく、Aubreyさんを殺害したこの父子が3ヶ月近くも逮捕されることなく普通の生活を送っていたことがのちに大問題となりました。

 

黒人女性が警察に自宅に進入され、射殺された事件

2020年3月13日、救急救命士として働く黒人女性のBreonna Taylorさんが、自宅のアパートで交際相手と一緒に寝ていたところを、家宅捜索に入って来た警察官に銃殺されました。

警察は麻薬組織が薬物を受け取っているアパートを特定したため、No-knock search warrent(ノックなしの家宅捜索令)という、警察が名乗らずにいきなり家に侵入できる令状を発行しました。

夜中に自宅に侵入された物音が聞こえたため、Breonnaさんの交際相手が自己防衛のために銃を取り出すと、警察官は立て続けに発砲。Breonnaさんは少なくとも8発の銃弾を浴び、その場で死亡しました。

Breonnaさんが亡くなった後、Breonnaさんのアパートは麻薬取引に使われていたアパートとは無関係で、警察が間違えた家に家宅捜索に入ってしまっていたことが明らかになりました。

 

なぜこんなことが起きるの?

アメリカに住む黒人と白人の歴史

アメリカでは1863年に奴隷解放宣言が出るまで、白人は黒人を奴隷として扱っていました。

奴隷解放宣言が出た後も差別は根強く残り、黒人への公民権を無効化したり、白人と有色人種の人種隔離が合法的に進められました。

1876年に制定された「ジム・クロウ法」の下では、水飲み場やトイレ、学校などの公共機関、さらにレストラン、ホテルなどにおいても白人と有色人種を分離することが合法とされていました。

しかし、1950年から1960年にかけて起こった人種差別を元にした事件に対して、有色人種がアメリカ人市民(公民)として、法律的平等な地位を獲得するために「公民権運動」をはじめました。

キング牧師をはじめ、多くの公民権運動家の影響により、1964年に公民権法が制定され、アメリカの法の上での人種差別は終わりを告げました。

根強く残る社会的格差と黒人に対する偏見

2020年の今も、人種隔離の影響でアメリカに住む黒人と白人には収入や雇用、医療や教育などの格差があります。

もちろん裕福な黒人や、教育を十分に受け博識を持った黒人もアメリカにはたくさんいますが、白人と比べると機会が少ないのも事実です。

格差のため、十分な収入や教育が得られない黒人の一部は、犯罪に手を染めたり、ギャングに加入したりします。これによって一部の白人に「黒人は危険な人種だ」というマイナスイメージが植え付けられ、いつまでも社会格差や偏見がなくならないという負の連鎖が止まらなくなるのです。

また、アメリカで公民権法が制定されたのは1964年。たった56年前の話なのです。

つまり、白人のおじいちゃんおばあちゃんの世代では、黒人を差別するのが合法で、当たり前の時代に生きていたということです。

その時代に生きていた白人主義のアメリカ人が、自分の子どもに、そして孫にまで黒人に対しての偏見やヘイト(嫌悪)を語り継いだため、2020年の現在も白人主義のアメリカ人がいなくならないのです。

警察官による暴力行為

アメリカでは、市民を守るはずの警察官による暴力行為が問題になっています。

アメリカに住む黒人は、一連の事件のせいで、パトカーが通ったらなにもしていなくても息をひそめます。自分が警察官に止められたら、命の危険を感じるのです。

黒人の親たちは、小さなわが子に「あなたは肌の色が黒いから、他の人とは違うの。これから警察にどんな理由であろうと止められたら、なにも悪いことをしていなくても、手を上げて名前を言って、とにかく武器を持っていないことを証明するのよ」と命を守る教育をしている映像が今インターネット上で話題になっています。

さらに、警察官が黒人の命を奪う事件の中のほとんどは、警察官は不起訴で終わっています。大体の事件では懲戒免職になるだけで、殺人犯として刑務所に入ることはごく稀です。

 

Black Lives Matter(黒人の命は大切)運動について

2013年、黒人少年のトレイボン・マーティンが白人警官から射殺された事件がきっかけとなり、Black Lives Matter(黒人の命は大切)というハッシュタグがアメリカで拡散されました。

その後も残念ながら黒人が肌の色のせいで命を落とす事件は立て続けに起こり、その度に黒人をはじめ、反人種差別主義者のアメリカ人がこのスローガンを掲げています。

All Lives Matter(全ての命は大切)じゃないの?

Black Lives Matter(黒人の命は大切)とSNSなどで声を上げる人たちに対して、「Blackだけではなく、全ての命は大切なのだから、この運動の名前を「All Lives Matter」に変えるべきだ」という意見があります。

そんな中、アメリカで大人気の白人アーティストのビリーアイリッシュが、白人のファンに向けてインスタグラムにこのような投稿をしました。

View this post on Instagram

#justiceforgeorgefloyd #blacklivesmatter

A post shared by BILLIE EILISH (@billieeilish) on

※内容を一部抜粋してわかりやすく和訳しています。↓

「All Lives Matter(全ての命は大切)」って言ってる白人を見てると気が狂いそう。

「黒人でないあなたの命は大切じゃない」なんて誰も言っていない。そもそも今は、誰もあなた(白人)の話はしていない。

(例え話)もしあなたの友達が腕を切ってしまったら、あなたはまずは全員に行き渡るようにバンドエイドを配るの?「All arms matter(全ての”腕”は大切)」だから? 違う。まずはその腕を切った友達を一番に助けるよね。だってバンドエイドが一番必要なのはその子。なぜなら今、血を流しているのはその子だから!

白人でも貧乏だったり、苦しんだりしてる人がいるのは知ってる。誰もあなたの人生が大変じゃないなんて言っていない。だけど少なくとも、あなたは自分の肌の色のせいで命の心配をしたことなんてないでしょう?それが ”白人の特権”。

ヒスパニック系の人は人種差別を受けたことがある?アメリカ先住民(インディアン)は?アジア人はどう?

10000000%あると思う。

でも今、この瞬間は、私たちは揃って黒人が何百年も受け続けた抑圧に集中するべき。

Black Lives Matter(黒人の命は大切)運動は、明らかに「Black Lives Don’t Matter(黒人の命は大切じゃない)」と言っているアメリカ社会に対して、その問題に対して目を背けさせないためのものなんだ。

なぜなら、

Black Lives Matter

Black Lives Matter

Black Lives Matter だから!!!!

 

「全ての命は大切」なんて、言わなくても分かるような当たり前のこと。それなのに、黒人の命となると、アメリカではその「当たり前」がなぜか通用しない。それが今一番注目すべき問題なのです。

だからこそ、「BLACK lives matter」と強調する必要があるのです。

 

海外に行ったことがある人は、アジア人ということが原因でバカにされたり、差別を受けたことがある人もいるかと思います。私も悔しい思いをした経験があります。

それでは、考えてみてください。

あなたが海外で受けたような差別を、自分の生まれ育った日本で経験したことがありますか?

自分の生まれ育った国で、自分の肌の色のせいで、命の危険を感じたことがありますか?

市民を守るための警察官に、殺されると恐怖を感じたことはありますか?

 

アメリカに住む黒人は、自分の生まれ育った国で、肌の色による人種差別を受けながら、そのせいで命の危険さえ感じながら、日々生きているのです。

アジア人差別も立派な人種差別だし、ハーフの方などは、日本の中でも人種差別を感じたことのある人もいると思う。この世にある全ての人種差別や偏見は全てがいずれはなくなって欲しいと願っています。

だけど今この瞬間は、私は黒人の人種差別にフォーカスして声を上げていきたいと思います。

BLACK LIVES MATTER.

 

アメリカ各地で起こっているデモや暴動

暴力では解決しない?

テレビやSNSで、アメリカ各地で起こっているデモや暴動の様子を見た人から、「エリの住んでいる地域は大丈夫?」と心配の声をいただきます。

George Floydさんの事件が起こったミネソタ州ミネアポリスでは、警察署が燃やされたり、百貨店が襲われたりしました。ミネソタ州以外でも、たくさんのデモ行進が行われ、いくつかのデモは暴動に変わりました。

過激なこの状況を「暴力じゃなにも解決しない」と批判する人が多くいます。

でも、アメリカに住む黒人は、もうすでに何度も何度も暴力以外の方法で平等を訴え続け、その度に裏切られ続けてきたのです。

肌の色が理由で殺される黒人。正当に法で裁かれない犯人の白人や警察官。

いくら暴力以外の方法で訴えても、登場人物が違うだけの全く同じような事件が繰り返し起こります。

ついにアメリカに暮らす黒人は、我慢の限界に達してしまいました。

国が国民の叫びを無視し続けた結果、歴史上のフランス革命や、日本の農民一揆のように、「暴動を起こさないと、国や社会は耳を傾けてくれない」という考えにさせてしまったのです。

実際にこのデモや暴動によって、Georgeさんを殺害した警察官が逮捕されています。

私も火に包まれる街をテレビで見て、最初は「暴動以外での方法で解決できないのか」と思っていました。

今でも暴力を肯定するわけではありませんが、アメリカの黒人差別問題は「暴力ではなにも解決しないよ!みんな止めよう!言葉で解決しよう!」と簡単にきれいごとは言えないほど、大きな社会問題になってしまったのだと思います。

 

平和なプロテスト運動

テレビでは過激な暴動ばかりが報道される中、たくさんの人が平和にデモ運動をしようと呼びかけています。

マイアミの近くの街で、警察官が揃ってデモ隊に対してひざまづき、謝罪の気持ちを伝えるという場面がありました。

黒人が集まってダンスをしながらデモをしたり、黒人男性と警察官がハグし合ったりする映像などを見ると、心が休まります。

アメリカの黒人差別のデモ運動はしばらく消えないと思うので、せめてどうか、少しでも平和なデモ運動が増えますように。

いま私たちに今できること

アメリカの黒人差別について学ぶ

まずはアメリカの黒人差別の長い歴史について学ぶことが大切だと思います。

「SELMA(邦題:グローリー/明日への行進)」と言う映画は、公民権運動の第一人者であるキング牧師の一生が描かれた映画です。心が重くなりますが、ぜひみて欲しい映画の一つ。

キング牧師による歴史的演説「I have a dream(私には夢がある)」のフル動画の日本語字幕バージョンをのリンクをこちらに付けたので、合わせて聞いてください。

また、私が最近まで知らなかった2010年代に起こった黒人殺害事件の数。

数々の事件を風化させないために、#SAYTHEIRNAMES(彼らの名前を口にして)というハッシュタグが出回っていて、黒人であるがために命を落とした人の名前が出てきます。

彼らの名前を検索してみて、それぞれの事件について学んでみてください。

 

署名する

George Floydさんの死に対して正義を!という署名活動です。

Georgeさんを殺害した元警察官は逮捕されましたが、第3級殺人罪ではまだ不十分です。

※2020/6/3更新 Georgeさんを殺害した元警察官デレク・ショーヴィンが、より重い第2級殺人の容疑で訴追されました。

また、事件当時その場にいてただ傍観していた3人の警察官は、まだ捕まっていません。

※2020/6/3更新 事件当時その場にいた3人の元警察官にも、殺人教唆とほう助の容疑(殺人をそそのかしたり、手伝ったりした容疑)で訴追されました。

下にリンクを貼っておきます。

Color Of Change

Change.org

次に、Breonna Taylorさんの死に対する署名ページです。

Breonnaさんの死は、家宅捜索の住所を間違えた警察の信じられないミスでしたが、さらに信じられないことにBreonnaさんを射殺した警察官は逮捕・起訴されていないそうです。

Change.org

日本からでも1分ほどで署名できるので、ぜひ参加してください。

 

差別に関して誰かと話してみる、シェアする

センシティブな問題ですが、友達や家族など身近にいる誰かと話してみましょう。

まずは人種差別があるという事実を認め、自分の意見を発信することが、黒人コミュニティにとって一番励みになると思います。

ためになると思った記事や画像を自分のSNSに投稿し、人種差別問題に対しての周りの認知度を上げるだけでも、Black Lives Matter運動へ参加していることとなります。

 

また、アメリカで起こっていることを人ごとのように思わずに、自分の周りでも差別や偏見はないか、一度考えてみることも必要だと思います。

アメリカの人種差別も、元々は肌の色が違うという差別と偏見から何百年も抜け出せずに、こんなにも大きな社会問題となっています。

身近にある差別や偏見を許さずに、自分の周りから少しでも変えていくことが、今の私たちにできる一番の反差別運動なのではないでしょうか?

いつかみんなが肌の色や違い、それぞれの抱える問題を認め合い、平等に暮らせる日が来ますように。

Elly

 

コメント

  1. […] 引用元:【Black Lives Matter】アメリカの黒人差別|2020年現在のアメリカで起こってい… […]

  2. りさ より:

    なぜ警察による不当な暴力が罪に問われにくいのか、そもそも黒人を投獄しまくっているのは何故か、是非この辺りについてもう少し詳しく解説お願いします!刑務所の民営化と、利権絡みの米政治の闇について、詳しく知りたいです

タイトルとURLをコピーしました